冬が旬の牡蠣、生食用、加熱用の違いと「あたる(中る)」原因は?

冬の食文化

牡蠣が美味しいシーズンです。

生牡蠣にカキフライ、グラタンやパスタなど牡蠣を美味しく食べる方法はいくらでもありますが、殻付きの牡蠣にレモンを絞ってつるりと食べるのは旬ならではの醍醐味です。

日本で主に食べられるのは、冬に旬となる「マガキ(真牡蠣)」の他に夏に旬を迎える「イワガキ(岩牡蠣)」があります。

牡蠣が好きな人にとって生牡蠣の美味しさはたまらないものですが、一方で牡蠣は「中毒しやすい」食材としても知られています。

なぜ牡蠣に中ってしまうのか?生食用と加熱用の違いは何なのか?

そんな疑問についても紐解いていきたいと思います。

牡蠣をもっと知ろう

牡蠣の種類と生態

マガキ

マガキは日本各地の浅瀬や沿岸部、河口付近に生息し、水中のコンクリートブロックといった人工物にも付着することがあります。

海にほど近い川の橋脚の下部、コンクリート部分に牡蠣がびっしり付着しているのを時折目にしますし、東京オリンピックのカヌー競技用に設置された消波装置に牡蠣が大量に付いてしまったということがニュースにもなっていました。

硬度があり安定した物体に付着する性質を利用した養殖が盛んに行われていることから、日本人にとって非常にメジャーな牡蠣です。

日本で流通しているマガキは殆どが養殖されたものですが、浅瀬を好むマガキは生活排水を栄養分として取り込んでしまうため、天然のものは食用に適していないという理由です。

イワガキ

イワガキはマガキと違って、6月から9月の夏季に旬を迎える種類で、マガキに比べて約2倍から3倍ほどの大きさがあります。

生息地は水深10m~15mといった深いところで、浅瀬で生きるマガキとは完全に棲み分けられています。

生活排水などで汚染されていない区域で育ったイワガキは天然ものとして食べられている他、養殖も行われています。

イワガキは生で食べられることが多く、大ぶりでプリプリした身にレモンを絞ってそのままつるりと食べるのは格別です。

牡蠣の旬は冬?

よく「R」のつかない月は牡蠣を食べるなと言われていますが、「May」「June」「July」「August」つまり5月から8月までの間は牡蠣の産卵後にあたり、身がやせて味も悪く、質の低い牡蠣で中毒しやすいためです。

そうはいってもイワガキは夏が旬なのでは?と疑問に思われるかも知れません。

そもそも、マガキとイワガキの旬が異なるのは、産卵方法の違いによるものです。

いずれも産卵期は夏になりますが、マガキはシーズンが訪れると一気に産卵してしまうことで貯め込んだ栄養分を使い果たし、身が急激に衰えてしまいます。

一方のイワガキは時間をかけて少しずつゆっくり産卵するため、身の栄養分を保ったまま夏を過ごします。

栄養分を使い果たす前の春~夏の時期でも美味しく食べられるため、イワガキには「R」のつかない月はNGというのは当てはまらないですね。

現代では養殖・流通技術の向上によって一年を通じて生牡蠣が食べられますし、オイスターバーでは海外ブランドの牡蠣を楽しむこともできます。

とはいえ、旬を迎えたマガキの生食や、牡蠣鍋や牡蠣のシチュー、グラタンなど冬ならではの味覚も最高ですよね。

生食用と加熱用牡蠣の違い

養殖する場所で生食用と加熱用に分けられる

スーパーの店頭に並んでいるパック入りの牡蠣には「生食用」「加熱用」と表示されています。

カキフライや鍋にしたい場合は加熱用を、生牡蠣には生食用を選ぶのはもちろんですが、そもそもどこが違うのでしょうか。

生食用と加熱用牡蠣の違いは「養殖・漁獲する場所の違い」で、鮮度の問題ではありません。

生食用の牡蠣は保健所が認めた海域、つまり沿岸から遠く離れており生活排水が流入しづらい、つまり細菌やウイルスのリスクが少ない場所で養殖されます。

さらに水揚げ後に浄水処理や紫外線処理で滅菌されているため、生で食べることができます。

一方の加熱用牡蠣は上記の指定海域以外の養殖場で獲れたもので、浄化処理も施されていません。

沿岸部海域には栄養分が多いため、加熱用牡蠣には豊富な栄養とうまみが含まれているともいわれています。

たとえ牡蠣に細菌などが付いていても、しっかりと内部まで加熱することで問題なく食べられます。

もちろん、生食用でも加熱用でもパッケージに記載された消費期限内に食べ切ることが大前提です。

加熱用牡蠣を生食できない理由

これには牡蠣の習性が深く関わりますが、牡蠣はとにかく「大食い」の生き物です。

小さい体で大量の海水を取り込み濾過しながら、それに含まれるプランクトンを絶え間なく食べている状態です。

浅瀬の養殖場では川からの生活排水が流れ込みやすい環境にあり、栄養分は豊富ながら細菌やウイルスまで一緒に取り込んでしまいます。

しかも牡蠣は細菌やウイルスを体内に蓄積してしまうため、加熱せずに食べてしまうと食中毒のリスクが高くなります。

時々「加熱用を生で食べたら美味しいのでは」という声を聞くこともありますが、上記のことからも加熱用牡蠣を生で食べることは絶対に避けましょう。

逆に、生食用牡蠣を加熱してしまうと縮んで味も薄く美味しくない、といわれることもあります。

筆者は一時期、用心のために生食用牡蠣を加熱して食べていた時期がありますが、心配なら念入りで加熱するのも個人的には有りだと思っています。

「牡蠣にあたる(中る)」主な原因

「牡蠣にあたったからもう二度と食べない」という方も少なくないようです。

筆者はあたった経験はありませんが、家族があたった時に本当に辛そうで、しばらくは生食を控えたくらいです。

それでも、あたる原因を知っておけば必要以上に恐れる必要はありません。

牡蠣で中毒する主な原因は、以下の通りです。

  • 加熱用として販売されているものを生食した
  • 生食用だが鮮度が落ちていた
  • 牡蠣にアレルギーがある
  • 体調が不十分だった
  • 調理者からノロウイルスが混入した

十分に注意していても中毒してしまうことはありますし、同じお店で生牡蠣を食べても中った人と平気な人がいるくらいなので一概には言えません。

中には食中毒と思っていたらアレルギーだったという話も聞くので、牡蠣を食べて繰り返し体調不良になるようであればアレルギーを疑うのも一つの方法です。

まとめ

冬の味覚の代表ともいわれる牡蠣ですが、日本で主に食べられるマガキとイワガキでは生態も旬も異なります。

マガキは沿岸部に生息して冬が旬となり、夏が旬のイワガキはマガキより大きく、水深のある場所で育ちます。

牡蠣は生食用と加熱用に区別がされていますが、基準は「漁場の海域」です。

大量の海水を取り込んで濾過することでプランクトンを食べる牡蠣は、水が汚染されていると細菌やウイルスを蓄積しやすくなるため、漁場によっては生食で食中毒リスクが高まります。

牡蠣に中る原因は様々ですが、正しく理解し安全に食べることで、牡蠣のうまみを楽しみたいものです。

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