椿餅が出回る時期は?源氏物語にも描かれた歴史ある和菓子

お菓子・スイーツ

春には桜餅、五月の節句には柏餅といったように、和菓子店の店頭には、その季節にしか作られない生菓子が並びます。

もっとも最近では定番化した和菓子も多く見られますが、その時にしか手に入らない和菓子の一つに「椿餅」があります。

椿餅はこしあんを道明寺で丸く包んで、上下に椿の葉をあしらった上品な餅菓子です。

椿餅は日本最古の餅菓子ともいわれ、あの「源氏物語」にも記述があります。

古い歴史のある椿餅、冬の間しか作られない椿餅に出会ってみませんか。

椿餅とは?

椿の葉で包んだ餅菓子

現在の椿餅は、道明寺粉で作られた餅でこしあんを包み、上下を椿の葉で挟むようにあしらったものです。

こしあんが使われることが多いですが、白あんやつぶあんも使われます。

真っ白な餅肌に鮮やかな濃いグリーンの椿の葉のコントラストがとても美しく、上品ですよね。

桜餅とは違い、椿を由来とする香りなどはなく、葉を食べることもありません(それ以前に固くて食べられないですが)。

お店によっては餅にうっすらとピンクの着色を施すところもあるようです。

光源氏も食べたお菓子?

先日、近くの和菓子店で椿餅を求めたところ「大河ドラマ、始まりますねえ」と店主。

2024年のNHK大河ドラマは紫式部をモデルとした「光る君へ」ですが、源氏物語ファンの中にはピンときた方もいるかも知れません。

椿餅は日本最古の餅菓子の一つといわれていますが、平安時代には既に存在し、源氏物語にも記述があります。

若菜(上)巻に以下の記述があります。

次々の殿上人は、簀子に円座召して、無造作に、つばいもちひ(椿餅)、梨、柑子やうのものども、さまざまに箱の蓋どもにとり混ぜつつあるを、若き人びとそぼれ取り食ふ。(源氏物語若菜上)

現代語に意訳すると「それほど身分の高くない殿上人たちは、簀子に円座を敷かせて、椿餅、梨、柑子といった食べ物がさまざまに箱の蓋に並べられているものを、若い人々は戯れながら取って食べている」となります。

どんな光景なのかなんとなく想像できますが、このシーンは光源氏の息子である夕霧や、夕霧の親友で従兄でもある柏木ら前途有望な若者たちが蹴鞠を楽しんだ後の小さな宴といったところでしょうか。

この蹴鞠のシーンは後のストーリーに重大な影響を与えるエピソードをはらんでいますが、詳しく語ると長くなるのでまた機会があれば。

現代の椿餅との違い

蹴鞠の後の宴で供された食べ物は平安時代の軽食といったところですが、当時の軽食は梨や柑子(柑橘類)、ナツメや栗、ヤマモモ、木の実などが食べられていたようです。

梨や柑子(柑橘類)については現在私たちが食べているそれらよりは原種に近いものをイメージできそうですね。

椿餅をはじめとした餅菓子は存在していましたが、甘い小豆餡が日本で食べられるようになったのは江戸時代中期以降です。

もちろん砂糖もない時代なので、餅に甘葛(あまずら=ツタ)の樹液を煮詰めて作った甘味料)を練り込んでいたといわれています。

現在の椿餅は往時のものと味わいは当然異なりますが、それでも椿の葉で包むのはそのままで、名前も変わることなく伝えられていることにロマンさえ感じてしまいます。

季節限定の味・椿餅を食べよう!

椿餅はどこで買える?

平安時代にはすでに登場しており、現在でも形を変えて食べられている椿餅ですが、関東で取り扱っているお店はあまり多くありません。

筆者もデパ地下を数軒回っても見つけられず、地元に根付いた個人経営の和菓子店でようやく出会えたくらいです。

しかも残り1個か2個といった品薄状態で、それだけ人気ということがわかります。

そもそも椿餅は通年作られているわけではなく、年末から2月にかけての寒椿が咲く時期にしかお店に並びません。

筆者が今年椿餅と出会えたお店を紹介します。

御菓子司 大倉山青柳|大倉山の梅最中
横浜市港北区大倉山にある御菓子司 大倉山青柳では第21回全国菓子大博覧会 名誉総裁賞を受賞した大倉山の梅最中をはじめ、どら焼き・羊羹・大福といった伝統的な和菓子に日本の四季を表した創作和菓子を製造・販売しております。慶弔・弔事菓子もご用意し...

御菓子司 大倉山青柳さん(東急東横線 大倉山駅前)

いち月 (下総中山/和菓子)
★★★☆☆3.06

いち月さん(JR総武線 下総中山駅前)

椿餅が気になる方は是非足を運んでみてください。但し季節ものであることと早々に完売することが多いため、事前に問い合わせをした方が確実かと思います。

家庭でも作れる椿餅

なかなか手に入りづらい椿餅ですが、家庭で手作りすることも可能です。

あんこを炊くのはハードルが高いという方には、市販のこしあんを使うのがおすすめです。

  • 材料(8個分)
  • 道明寺粉:90g
  • 砂糖:30g
  • 水:180ml
  • こしあん:160g
  • 椿の葉:16枚
  1. 道明寺粉、砂糖、水をボウルに入れてよく混ぜ、10分置く。
  2. こしあんは8等分にまとめておく。
  3. 1の全体を混ぜてラップをかけ、電子レンジで7~8分加熱し、そのまま蒸らす。
  4. 木べらで生地を混ぜ、粗熱が取れたら8等分してこしあんを包み、形を整える。
  5. 椿の葉で生地を挟むように上下にあしらう。

椿の葉は入手しにくいと思いますが、製菓材料店で入手するのが確実です。

椿には害虫がつきやすく、庭木には薬剤を散布することも多いため、葉を摘む場合には注意しましょう。

歴史ある餅菓子「椿餅」が令和の世に伝わり、電子レンジで手軽に作れるというのはなんだか不思議な気がしますね。

まとめ

平安時代には既に存在し、源氏物語にも記述のある餅菓子「椿餅」。

年末から2月までの、寒椿が咲く時期にしか作られない季節菓子で、取り扱いのある和菓子店も多くありません。

道明寺餅でこしあんを包み、濃い緑の鮮やかな椿の葉を上下にあしらった美しい餅菓子ですが、平安時代には小豆餡がなかったため甘葛を煮詰めることで甘味をつけていました。

平安貴族も口にした椿餅、1000年の歴史を思いながら味わうのも楽しいものですね。

 

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